#プロのひと工夫

追求したのは幸せな時間。料理家直伝がんばり過ぎないお外ごはん

2023.2.10
どなたかのおうちを訪問してキッチンを覗かせてもらったとき、「こんなキッチンだったらお料理が楽しくできそうなのに…!」と思ったことはありませんか?そんな素敵なキッチンにお邪魔し、日々のごはん作りを楽しく快適にするためのヒントをご紹介します。

今回は、キャンプをこよなく愛する料理家・今井真実さんご家族のお外“キッチン”にお邪魔しました。

インタビューした人
料理家
今井 真実さん

紙雑誌やweb媒体などで、レシピ作成、スタイリングなどを提案。料理教室「nanamidori」を不定期で開催中。みそ・ソーセージ作りや、梅仕事のレッスン、Twitterで毎日配信する夜ご飯メニューの記録「#今井家のご飯」も人気。

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結婚10周年で始めた家族キャンプ

「結婚10周年目に『そういえば家族全員で楽しめる趣味がないね。そういうのがあればいいのに』という話になって。焚き火なら興味があると夫がいうので、じゃあキャンプを始めてみようってなったんです」

はじめに道具だけはしっかり揃えて、右も左もわからないまま海沿いのキャンプ場へ出かけたという今井さん。想像以上の強風下でテントのタープが張れず、「もうダメだ!」と思っていたら、隣のサイトの人が見かねて助けてくれたのだそう。

「最初にそんな心が折れるようなことがあったのに、とにかく楽しかった」と、キャンプが趣味になった経緯を話してくださいました。
今では、泊りのキャンプはもちろん、気軽にデイキャンプも楽しんでいるそう。そのため、家族みんな、準備は手慣れたもの。

キッチンテーブルにクーラーボックス、アウトドアテーブル、チェア、ウォーターサーバー、ゴミ箱が、こともなげに次々と組み立てられていき、青空の下、今井家の即席ダイニングキッチンがあっという間に完成しました。
少しずつ改良を加えてきたという即席ダイニングキッチンは、端々に工夫が施されています。
まずは、収納力抜群のキッチンテーブル。こちらはなんと旦那さんの手作り!天板を取り外して折りたたんで持ち運びできる優れものです。
いつでも身軽にキャンプができるようにと、カセットガスや燻製用のウッドチップなどの道具はまとめてボックスに。

また、普段使いしている調味料も「台所からぽんぽん放り込んで」まとめてカゴに収納しています。

「絶対に持っていくのはお塩。お塩さえあればなんとかなるものです!あとは、ごま油や「Cook Do® 香味ペースト®」などがあれば、素材が少なめでも風味が出しやすくて便利ですよ」と今井さん。
こちらは、コーヒーセットだけを入れたバッグ。キャンプに限らず、「ちょっと庭でコーヒーを飲もう」というときにも活躍しているのだとか。思い立ったときに、ひょいと持ち出せるから、ためらうことなく実行に移せるというわけです。

未経験者からするとハードルが高く感じられるキャンプですが、今井さん一家にとっては、いつもの食卓の延長線上といった印象。気負わずリラックスした雰囲気が伝わってきます。

お外で食べるごはんは、簡単でもおいしい!

キャンプ飯と聞くと、バーベキューやカレーのようなものを想像していた編集部でしたが、今回ご相伴させていただいたのはお鍋!
ごま油をたっぷりひいたお鍋に、カットしておいた白菜とにんにくスライス、しょうがひとかけ、豚バラ肉を入れて、岩塩をぱらり。さらに料理酒を半カップ、水を1カップほど加えたら、あとは火が通るまで煮るだけ。

「お鍋は家でいつも使っているものです。こんなふうに風防があれば火もつきやすくて、お外でも使いやすいですよ」と今井さん。
さて、できあがったお鍋の味はというと、試食した編集部全員が「これだけの材料と調味料で本当にこんなにおいしくなるんですか…!?」と思わず唸るほど。薄めの塩加減にしておいて、それぞれが調味料を加えて好みの味に仕上げていきます。

ちょい足しする調味料として、ポン酢、ごま油、さんしょう、レモンなどをおすすめしてくださいました。
お鍋を食べ終えたら、水としょうゆを足して〆のラーメン。身も心もすっかり満たされます。
「私がキャンプを始めたときは、インスタのいわゆる“映え飯”の最盛期。私も最初はテーブルいっぱいに映える料理を並べてみたかったんですけど、屋外だからどんどん冷めちゃうんですよ。

『それならもうおいしいことのほうが大切!』と、どんどん簡単な料理になりました(笑)。前日の残りものなんかも持っていきます」
キャンプの楽しみの大部分は食べること。もちろん、調理もその一部ですが、「そこに力を入れすぎると、しんどくなってしまう」と今井さんは話します。

そんな今井さんが強くすすめるのが、キャンプ場近くの道の駅を利用すること。

「道の駅でその土地のお野菜を買ったり、おいしい卵を買ったりするんです。小さいお鍋でご飯を炊いて、最後にその卵で卵かけごはんにすると、すっごく贅沢した気分になりますよ」

「これだけのことでも、おいしくて幸せな感じがする」

食後のドリップコーヒーを飲みながら、娘さんは読書、息子さんはお散歩と、思い思いの時間を過ごします。冬場は、テントのなかにテーブルやチェアも全部入れて、移動式別荘状態になるのだとか。

「8人用のテントを買ったので、うちのリビングより広いんです(笑)。いつものキャンプでも、家族4人でテントのなかインドアで過ごしています。お姉ちゃんはずっと本を読んでるし、私も読めてない本を読んだり。

家にいたら家事や仕事を始めてしまうので、とてもいい時間を作れているんです」
「二〜三泊するときは、料理を作るのにも飽きてくるので、スーパーで各自が食べたいレトルトカレーを選びます。鶏肉だけ炭焼きにして、みんなで食べ比べするんです。『これだけのことでも、おいしくて幸せな感じがする』ってお伝えしたいですね」と今井さん。
いつもと同じごはんが、味も楽しみ方も、まったく違って見えるお外ごはん。今井さんのお外キッチンのおともをしていると、自分でもやってみたくなるから不思議です。みなさんもぜひお試しください!

※許可を得て私有地にて撮影しています。

<記事転載元>
「AJINOMOTO PARK」PARK MAGAZINE
あこがれキッチン#5今井さん家のおいしいお外ごはん