味の素KKフロンティア研究所
所長
味の素KKフロンティア研究所
所長
私たちは、ヒトに対して有益な健康成分のメカニズム研究や、科学的エビデンスに基づいた商品の研究開発等、「有用性」の研究については強い自負を持っています。当社には医学・生理学分野でトップクラスの研究員が多数在籍しており、ノーベル医学生理学賞・受賞者を多数輩出している世界トップの医学系研究機関へ毎年研究員を派遣するなど、今後の事業を担う優秀な研究者の育成にも力を入れています。国内外の大学、研究機関との共同研究も精力的に行う中で、特定の素材がヒトに対してどのような健康価値をもたらすのか、研究者たちが日々切磋琢磨しながら、医薬品にも匹敵する高いレベルで基礎研究を行っているのです。また長年、食品事業と医薬事業を手掛け、それぞれの分野に長けた研究員が交流を持ちながら研究を進めていることも、当社が健康成分を研究する上で強みの1つであると感じています。
当社は100年に渡りアミノ酸を研究してきた企業です。アミノ酸は人体の約20%を構成する成分として重要な役割を担っている、ということは以前から知られていましたが、その後研究を進める中で、カラダを構成する成分としての役割だけでなく、ヒトの健康に対して様々な役割を担っている栄養素だということが明らかになってきました。
筋肉や皮膚など、体の組織を構成するたんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あるのですが、それらのアミノ酸に特に注力して、研究を進めています。例えば、カラダをつくる成長初期段階である乳幼児に必要なアミノ酸もありますし、成人や高齢になってから積極的に摂取すべきアミノ酸もあります。特定のシーンにおいて、有用性を発揮するアミノ酸の存在も徐々にわかってきました。それらの基礎研究を活かして、「休息アミノ酸」“グリシン”や、抵抗活力をサポートするアミノ酸“シスチンとテアニン”、日常の健康維持に欠かせない、9つの必須アミノ酸を混合した新しい栄養成分「Amino L 40」といった、有用性を備えたアミノ酸を次々と発見しているのです。
健康事業に留まらず、全社的な課題だと認識していますが、今後ますます深刻になっていくであろう「低栄養」と「過剰栄養」の問題、そして超高齢化社会を迎えるにあたって、早急に求められている、「健康寿命の延伸」といった人類共通の課題について、食品メーカーである我々がどのような価値やソリューションを提供できるのか、日々考えながら、研究開発を指揮しています。
例えば「低栄養」の解決策の1つとしては、生まれたばかりの赤ちゃんが飲む母乳の中には、アミノ酸が豊富に含まれており、ヒトとして成長する初期段階で、不可欠な栄養素を多く含んでいることがわかってきました。世界には幼い子供たちの栄養不足が深刻な地域が、アフリカを中心にまだまだ残されています。私たちは、アフリカ・ガーナの伝統的な食事であるお粥(koko)にプラスすることで栄養改善効果を発揮する「KOKO Plus」というアミノ酸を主成分とする栄養サプリメントを開発し、現地の母親たちに提供するという「ガーナ栄養改善プロジェクト」を、2009年にガーナ大学、米国のNPOと協働で立ち上げました。その基礎研究も我々フロンティア研究所で行っているのです。アミノ酸の持つ栄養価値を世界の人々の健康に役立てることができる、大変意義深い事業に成長しつつあると感じています。
私たちは、お客様のお手元に届くまで、安定した高い品質で、有用性や安全性がしっかりと担保できている状態で商品をお届けできるよう、商品開発の初期段階から配慮して商品設計をしていることも特長の1つだと感じています。食品を長らく自社工場で製造する中で蓄積してきたノウハウを、サプリメントという分野でも存分に活かしているのです。これからもハイレベルな基礎研究に裏打ちされた、科学的エビデンスをもつオリジナリティのある商品を開発し、お客様にお届けしていきたいと思っております。