プレフレイル

働き盛りの筋肉量低下に要注意!
身体活動量の維持を心がけましょう!

最近よく耳にする〝フレイル〟という言葉。高齢者の健康課題だと思われがちですが、そうではありません。最近は働き盛り世代でも増加傾向にあるフレイル予備群。今回は、その予防のポイントをご紹介します。

東京慈恵会医科大学附属柏病院病院長、同大学臨床検査医学講座教授、同大学院代謝・栄養内科学教授。1987年、防衛医科大学校卒。米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部動脈硬化研究センターなどを経て現職。日本動脈硬化学会理事など数多くの学会役職も兼任。

高齢者だけの課題ではない
最近のフレイル事情

フレイルとは、「加齢や持病等、さまざまな原因により心身機能が低下し、要介護のリスクが高まっている状態」のことを指します。
フレイルと聞くと、高齢者の健康課題だと思われがちですが、最近では30代~50代の働き盛り世代に、プレフレイルと呼ばれるフレイル予備群が増えてきているそうです。

働き盛り世代は、健康診断の数値が気になり始め、生活習慣病の予防対策に興味をもったり、実践したりするものの、フレイルといわれてもピンとこないのが現状。自分たちの親世代の問題だと、自分事化できずにいると、20年後、30年後の健康維持が困難になり、要介護のリスクが高まります。
体力や筋力の低下を感じたり、体重の減少や倦怠感がみられたりしたら、それはプレフレイルの状況に陥っているのかもしれません。早めの気づきこそが、フレイル対策には重要なのです。

コロナ禍の自粛生活が招いた
フレイル予備群の増加

ではなぜ、働き盛り世代にフレイル予備群が増えてきているのでしょうか。
その引き金として指摘されているのが、コロナ禍での自粛生活です。
当時はさまざまな制約があり、仕事もリモートで済ませることも多くなりました。制約が解除された今でも多様化する働き方の選択肢として、リモートワークは定着してきました。それによって、実際に通勤する日数が減ったという人も多く、自ずと身体活動量も減ってしまっているのです。
最近は、スマホの歩数計アプリを活用している人も多くいますが、家で仕事をしている日などは、ふと開いた歩数計の表示にギョッとすることがあるのではないでしょうか。まだ数百歩しか歩いていないと…。運動習慣のない人は特に、通勤もそれなりの運動になっていたのです。
そんな小さな気づきを改善の実践につなげていくことは、プレフレイル状態に陥ることを予防し、将来的にはフレイルとなって、要介護になるリスクを低減することにつながります。

身体活動量の低下を改善し
たんぱく質で筋肉量を維持

フレイルには、「身体的要因」「社会的要因」「精神的要因」の3つの入り口がありますが、このいずれかをきっかけにプレフレイルの状態になると、それ以外の要因を誘引することにもなり、互いに影響しながら悪循環を繰り返すフレイルサイクルに陥ってしまいます。このなかで働き盛り世代が一番気をつけたいのが、身体的要因=身体活動量の低下です。
在宅勤務が増えることで、身体活動量が低下し、それに伴い筋肉量の減少が知らない間に起こっています。これを予防するには、意識的に身体活動量を増やすことが大切です。家のなかでもできるスクワットや腕立て伏せなど、筋肉に負荷をかけるエクササイズを、できれば毎日、少なくとも週3回、できる範囲で実践することを心がけましょう。また、リモートワークは通勤時の身体活動がなくなりますので、その分、散歩などで活動量の低下を改善するのは有効です。加えて、座りっぱなしにならないように注意することも大切です。運動習慣を身につけることはなかなかむずかしいものがありますが、できることから始めてみましょう。

運動に併せて必要なのが食事への意識です。栄養バランスのよい食事を摂ることは基本ですが、筋肉をつくるもとになるたんぱく質が不足しないよう、しっかり摂れる食事を工夫しましょう。
今はまだ大丈夫だと思っていても、いずれ他人事ではなくなるときがやってきます。早くから予防を意識して、健康寿命を長く維持しましょう。

もしかしてフレイル予備群?
今すぐチェック!!

*上記のうち、1~2つ当てはまれば、フレイル予備。1つ以上当てはまる場合は、フレイルと判断されます。

フレイル予備群にならないために
心がけたい健康習慣

適度な運動を心がけよう!
外出時は、「エレベーター・エスカレーターをなるべく使わない」「いつもより早歩きする」「少し遠回りする」等、歩行の負荷を高めましょう。家にいるときは、座りっぱなしに注意して、簡単な筋トレを心がけましょう。

バランスのよい食事を心がけよう!
食事はなるべく、主食・主菜・副菜・汁もの(*)を揃え、毎食たんぱく質を摂る工夫をしましょう。また、しっかり噛んで食べることでオーラルフレイル(口腔機能の虚弱)も予防するようにしましょう。
*皿数を揃えなくても、丼もの等で主食と主菜を兼ねることでも大丈夫です。

積極的な社会参加を心がけよう!
気力や活力を維持するために、他者とのコミュニケーションを積極的に図るようにしましょう。ボランティア活動や町内会活動に参加する等、職場や家庭以外の居場所も作るようにしましょう。


公開日:2025年4月